【楽修舎】の設立趣旨

日本では、知的障がいや発達障がいなどを有する人が、特別支援学校高等部などを卒業後に引き続き学ぶ機会が極めて限られているのが実状です。その進学率は1%にも満たず、知的障がいや発達障がいを有しない人の大学や専門学校への進学率(約7割)と比べてみても格差は歴然としています。2016年に施行された「障害者差別解消法」や、その制定根拠となった国連総会2006年採択の「障害者権利条約」(日本は2013年に批准)においても、『障害者が、差別なく各種の教育や訓練を享受できる平等な機会を確保する。』旨が謳われているにもかかわらず、です。
社会では、いまだ障がいを個人の能力(できる・できない)と捉える傾向が強いですが、知的・発達の遅れは「機能的かつ社会的な視点に立った」障がいであって、個人の責に帰する能力ではないということから、知的障がいや発達障がいを有する人に適合した高等教育機関(職業訓練や生涯学習などを含む。)の保障が不可欠という考えに至ります。
教育は、本来文部科学省所管の学校がその役割を担うものです。特別支援学校高等部に視覚障がいや聴覚障がいを有する方向けの継続教育機関として「専攻科」を設置し、進学率はそれぞれ3~4割程度の水準があるものの、一方で知的障がいや発達障がいを有する人を対象とした「専攻科」は、全国に9校程度しかないのが実態です(2013年)。
こうした中、2008年に和歌山県にある社会福祉法人が障害者福祉サービス事業の一環としての「自立訓練(生活訓練)」(日常生活能力を向上するための支援)を、「専攻科」教育に相当する内容として実施するアイデアを企画・実践し、今日言うところの“福祉型専攻科”モデルの先駆けとなりました。2016年現在確認されている“福祉型専攻科” の機能を持つ福祉型事業所は、全国に37箇所程度に及びます(それでも、全生活訓練事業所の数%程度相当)が、こうした活動の背景には、『障がいがあるからこそ、じっくり、ゆっくり教育に時間をかけて社会に出る必要がある。』、『障がいを有しない人が、当然のように18歳で大学や専門学校に進学する時代に、障がいを有するのに18歳で社会に出るのは早過ぎる。』、『仲間との様々な経験を重ねて、たとえ無駄な時間と思えたとしても悩み失敗しながら自己像identityを描いて欲しい。』などの切実な想いがあることを忘れてはなりません。一方で、『早く職場に適応させたいので進学は不要。』、『教育内容が不明確で有用性が疑問。』との声があるのも事実ですが、“福祉型専攻科” は、選ぶか選ばないかは各々の自由であっても、なくてはならない選択肢のひとつであって、その存在を希望し期待する人たち(当事者のみならず家族も含む。)の受け皿になり得るものであることを強く確信し、ここに、【楽修舎】設立の意義を掲げるものです。
(2017年12月作成)

【楽修舎】の理念mission

“【楽修舎】は、障がいの有無に関わりなく誰もが望む「探求」(知りたい・やりたい)や「発見」(知ること・やること)の気持ちに応える「楽(がく)修(しゅう)」(≠学習)の機会を設け、障がいを理由とする制約を超えた経験を通じて、自らの可能性や生き甲斐を見出し、将来の生活が潤い豊かなものとなるよう、その一助を担う。”

【楽修舎】の目的goal

1.「知ろう(やろう)とすること」と「知る(やる)こと」の楽しさに気づき、自ら進んで取り組もう・取り組み続けようとする力を豊かにする。

1.障がいに関わりなく、生活上当たり前のこととして経験すべき多彩な機会を通じて、生来備えている「自分らしさ」を見い出し、伸ばしていく。

1.縁があってひとときを共に過ごす仲間どうしや地域社会との関わりを通して絆を深めながら、自身の存在価値を確信することで、社会性を育む。